先日書き上げた福祉産業委員会の視察所感を議会事務局に提出して来ました。「もう書いたのですか(@_@)」とビックリされました。「仕事に追われるのではなく、仕事を追って行く」の心構えです。このHPにもUPしておきます。
福祉産業委員会 視察研修所感
平成28年10月19日(水)~21日(金)の3日間、福祉産業委員会のメンバー7名と当局2名の合計9名で行政視察に行って参りました。視察項目は・・・
①東京都板橋区 板橋区立企業活性化センターについて
②千葉県木更津市 きさらづ健康マイレージについて
③東京都中央区 特別養護老人ホーム「介護ロボットの活用状況」について
④東京都八王子市 障害のある人もない人も共に安心して暮らせるまちづくり条例について
の4項目です。
3日間共晴れの良い天気で、通常2泊3日の委員会視察の場合、3ヶ所の視察先ということが一般的ですが、今回は委員長の強い情熱で、「介護ロボットの活用状況」を自治体にではなく、施設に直接お願いして訪問をするなど、ボリューム的にも充実した3日間となりました。
①東京都板橋区 板橋区立企業活性化センターについて
区役所に行くのではなく[板橋区立企業活性化センター]に直接訪問しました。この[板橋区立企業活性化センター]は、創業及び中小企業の経営革新を支援し、区内産業の活性化を図ることを目的として、平成14年10月に開設された施設です。平成17年度に行われた区施設の管理に対する一斉見直しを受け、経営相談業務等における民間ノウハウを取り入れるため指定管理者制度を導入。平成18年4月からは「板橋区起業支援フォーラム有限責任事業組合」が区より受託をして管理運営をしており、指定期間は5年単位で現在3期目とのことでした。
この施設の事業は大きく分類すると「創業支援(インキュベーション)施設の運営」「研修・会議施設の運営」「セミナー・講習会等の実施」「相談事業の実施」ということになるのですが、当日はその中でも特に「中小企業を救う! 板橋モデル」として有名な経営改善支援について、その中心で活躍しておられる中嶋修板橋区立企業活性化センター長から直接お話をお聞きすることが出来ました。
この中嶋センター長。ご自身もかつては資本金3億円、年商230億円、従業員280名の上下水道専門会社の社長であったのですが、2002年民事再生も不調に終わり、東京地裁より破産宣告を受けた壮絶な経験を持つ方で、その経験に基づいた中小企業への相談業務は単に机上の空論ではない、的を得たアドバイスとして今日までに創業支援1000人、再生支援300社を超える実績を上げておられました。
もちろんセンター長だけで相談に対応できる訳ではありませんので、経営改善チームとして、弁護士・税理士・中小企業診断士・社会保険労務士・公認会計士・行政書士・司法書士・・・その他実務専門家など215名が登録をし、無料相談に乗っておられるとのことで、センター長の仕事としては、相談を受けた内容をそれらの専門員につなぐ(コーディネート)することと、相談者の気持ちに寄り添って考えてあげることが主な業務であると感じました。
安倍政権の下、地方創生・一億総活躍社会実現に必要な事業として「よろず支援拠点」というものがあります。今回の板橋区立企業活性化センターにおける経営改善支援はその「よろず支援拠点」のモデルになっているのではないかと思います。実際当日も熊本と兵庫県から「よろず支援拠点」のコーディネーターの方が研修に来ておられました。
[板橋区立企業活性化センター]の相談支援業務は9時から19時まで、土曜日曜祝日も相談可能とのことです。休む時間もなく非常に熱心に情熱を持って取り組んでおられる姿に敬意を表したいと思いますが、一方でこの業務をセンター長ひとりが担われているといった印象を拭うことが出来ませんでした。そういった意味では、全国にあるに「よろず支援拠点」がこの板橋を正にモデルとして、そのノウハウだけでなく情熱も受け継ぎ、全国の中小企業の助けになって下さればありがたいと思います。
②千葉県木更津市 きさらづ健康マイレージについて
メタボ・生活習慣病予防策として、また特定検診における40才~50才の受診率を上げるためには何かインセンティブが必要なのではとの考えから、木更津市では平成27年5月より[きさらづ健康マイレージ]を実施しました。各種健診の受診や健康をテーマとする講座への受講参加によりポイントを付与し、3ポイント集めることにより応募し抽選で応募者の1割に特別賞を、残りの9割の方には参加賞をプレゼントするという事業です。
当時千葉県内で既に3市が実施しておりそれらを参考に事業の組み立てを考えました。当時国が新たに創設した地方創生の補助金を利用して、当初予算額550万円、事業の運営(広告チラシ・ポスターの作成、問い合わせに対する対応、健診会場でのPRやポイントの付与、応募券の整理、商品の調達・配送)は5社による指名競争入札で民間に委託をしての実施でした。
応募対象は、他の先進自治体の中には在勤の方も含めるところもありましたが、木更津市の場合は住民に限ることにしました。また、賞品は全て民間企業からの無償提供品としているところもありますが、木更津市では地元にお金を落とすという意味から地元の産物を買い上げて行いました。3ポイントという少ないポイントで応募可能としたこと、健診会場などで委託先の事業者がポイント付与のスタンプを押すなど、市民の取り組み方法が簡単であったことなども幸いして、応募者は2913名にも及びました。当初の目標が5000名であったことを考えれば少ないとも言えるのですが、他先進市の例が当初100名程度といった市もあったことを考えれば、初年度としては大成功だったのではないかと思います。
そして2年目となる平成28年度は現在実施中でありますが、昨年度と大きく変わった点としては、国の補助金がなくなったので予算が一気に100万円と大きく削減されました。そのため民間への事業委託も行わず、健診場所でのポイント付与といった業務をすることが出来なくなりました。そのため平成27年度の確認スタンプ方式から、自ら目標を立てて実践することが大切との発想に基づき、自主申告方式に改めました。従って、自らの運動や食事の目標を立ててそれらを実践することもポイント項目に含まれています。また、歯科健診や献血も項目に追加しました。予算の関係でプレゼント賞品の本数も大きく減ってしまいましたが、健康のための事業と言うことで、食の健康・地元農業の振興という視点から「地元産野菜の詰め合わせ」と「新米」だけとしました。但し、Wプレゼントとして民間業者から提供品を募り、それらを賞品とするということで予算の減額を極力埋める努力をしておられました。
市民から見れば、昨年に比べ応募の手軽さ(スタンプ方式から自主申告方式)が失われ、賞品も少なくなった状況で、本年度はどのくらいの方が応募されるのかは非常に興味のあるところです。但し、そうは言っても、「賞品が欲しいから健診を受けた」といったことや応募をして貰うことが本来の目的ではありません。応募した方が、今回の応募をきっかけに健康に対してどういった取り組みをその後にしたのか。あるいはもっと飛躍して、今回の事業を通して、木更津市民の健康づくりに対する意識がどれだけ高まり、どれだけ健康になったか・・・そのことが一番大切なことであると思っています。
本年度から刈谷市でも実施している[健康マイレージ事業]、刈谷市の場合10ポイントで応募可能ですから、応募者が伸びないのではないかとの心配もあるようですが、この事業の本来的な目的をしっかり認識しながら事業を見て行きたいと思っています。
③東京都中央区 特別養護老人ホーム「介護ロボットの活用状況」について
こちらの視察は自治体に出かけたのではなく、東京都中央区にある特別養護老人ホーム[新とみ]に直接お願いをして施設見学をさせて頂きました。社会福祉法人シルヴァーウィングが運営する特別養護老人ホーム[新とみ]では、職場環境の整備と利用者のQOLの向上を目的に国からの各種補助制度も活用しながら積極的に介護用のロボットを介護現場に導入しておられ、今回の視察ではその一つ一つについて実際に利用している状況を見ることが出来ました。一口に「ロボット」と言っても、その利用目的によって幾つかの分野に分類されます。その分類ごとに紹介しますと・・・
(1)コミュニケーションロボット
1.「Pepper(ソフトバンク)」
車いすの入所者20名ほどの皆さんの余暇時間に、施設職員(インストラクター)と共に、脳のトレーニングゲームや体操をやっていました。利用者からは「ペッパー君」という声援や笑い声も聞かれ、職員のアシスト以上のアイドル的な存在のように感じました。
2.「PALRO(パルロ)」
先のPepper同様、レクレーションの場にいましたが、Pepperが主にやっていたため、ここでの動きはなし。
(2)リハビリロボット
1.ReoGO-J(帝人ファーマ)
上肢用の運動訓練用装置として、脳卒中による片麻痺患者等の機能障害の程度に合わせた訓練を、モニターを見ながら実施することが出来る。労力や時間の掛かる徒手による反復訓練を代替することが出来、療法士の身体的・時間的な負担を軽減できると思います。
2.歩行アシスト(本田技研工業)
歩行時の股関節の動きを左右のモニターに内臓された角度センサーで検知して、制御コンピューターがモーターを駆動。股関節の屈曲による下肢の振り出しの誘導と伸展による下肢の蹴り出しの誘導を行うことで、効率的な歩行をサポートします。実際に装着してみましたが、確かに歩行が楽になります。特に階段の上りに威力を発揮します。
3.POPO(大和ハウス工業)
歩行訓練用のツールです。リフト機能で身体を吊り上げ、下肢に掛かる体重の負荷を軽減する免荷機能により、これまでにない歩行訓練を実施することが出来ます。メーカーから推察すると、家庭での利用も可能であると思えます。
4.Tree(リーフ株式会社)
杖と同じように持つだけで、手軽に歩行訓練を行うことができ、歩幅や歩行速度、音声テンポなどの情報を入力すると、その情報に合わせてロボットが目標となる足の踏み出し位置を映像で示し、音声で「みぎ」「ひだり」などの声を掛けて、利用者の歩行を誘導していました。
5.LR2(安川電機)
下肢のためのリハビリ装置です。
(3)移乗介助機器
1.マッスルスーツ(株式会社イノフィス)
装着型の移乗支援ロボットです。移乗作業時の上げ下げ動作を空気圧で補助し、介護職員は腰に負担なく介助することが出来ます。腰の負担を最大3分の1に軽減することができ、装着も約10秒と簡単です。委員会メンバーの多くが体験しましたが、慣れればとても楽に介護者を持ち上げることが出来そうです。
2.リショーネン(パナソニック)
非装着型の移乗介助機器です。ベットが中央で分離し車いすに変わるため、ベットから起こして車いすに乗せる必要がありません。電動ベットと電動リクライニング車いすを融合した新たな概念のロボット介護機器です。
3.サラライト・サラステディ(ケアフォース)
車いすに代わる立体補助器です。移動やトイレなどの日常活動中に、座った状態や立位まで安定的にサポートすることが出来ます。
(4)移動支援機器
1.スカラモービル(アルバジャパン)
車いすに人を乗せたまま階段を上り下りすることは大変な作業です。その負担を低減するのがこの機器です。エレベーターやリフトに比べて低コストな上、可搬型なので様々な場所での使用することが出来ます。
(5)見守り支援機器
1.OWLSIGHT(イデアクエスト)
赤外線を利用したセンサーしたベッドの見守りシステムです。被介護者が立ち上がったり、柵にもたれるといった姿勢の変化による大きな動きと、もだえやふるえといった小さな動きのどちらも検出可能で、人工知能を用いてスマホ等で介護者に通報します。
2.眠りSCAN(パラマウントベッド)
マットレスの下にこの機器を敷くだけで、睡眠・覚醒・離床の測定がPC上に表示されます。入居者の状態をモニターで把握した上で、夜間巡回が実施出来るためスタッフの精神的負担の軽減につながります。刈谷市の特養でも導入が検討されているようです。
これらの機器全てについて、現場でデモをして頂き、実際に装着し体験することも出来ました。体験してみて思ったことは、マッスルスーツなどは腰に負担の掛かる介護者の負担軽減には最適であること。また、リハビリにおける反復動作はLR2のようなロボットに任せて、理学療法士は心に届くリハビリをするといった、人とロボットを上手に使い分けることにより、ロボット導入の本来の目的である「職場環境の整備(介護者の負担軽減)」が叶い、そのことが結果的に「利用者のQOLの向上」に繋がるものと確信をしました。
また、この時期(10月19日~21日)、東京ビッグサイトではちょうど[JapaneRobotWeek2016]が開催され介護用のロボットも多数出品されていたようです。導入するかどうかは、費用対効果の視点もありますが、こうした新しい介護用ロボットの情報については積極的に取り入れるよう、介護の現場で働く方々、事業者に市としても呼びかけをして頂くことが大切ではないかと感じました。
④東京都八王子市 障害のある人もない人も共に安心して暮らせる八王子づくり条例について
平成28年4月にいわゆる「障害者差別解消法」が施行されましたが、八王子市ではそれよりも前、平成24年4月から「八王子差別禁止条例」とも言える条例を制定していました。そこに至る足跡としては、多数の障害者団体が主催して[八王子障害者の権利を考える会]を開催しました。目標はこの条例をつくることにあったとのことで、平成21年4月から毎月開催され、1回に40名程度出席し20回開催、延べ850名が参加しました。その結果A4の用紙約20ページの原案が作成され、議会に条例制定の請願が提出されたとのことで、この条例は行政が主導して出来たものではなく、団体の動きが活発になり、そのことが行政を引っ張る結果となり制定されたものです。全国では5番目。政令市以外では初となる条例でした。
この条例は理念条例ですから、この条例制定により市としてどういったこと行ってきたかと言うと、この条例が出来たことを知っている方は障害者当事者ですら約3割しかなかった現実のなかで、「障害者理解」といったことに務めたとのことでした。先ず始めは職員研修、教員に対しての研修、冊子を作成して市民への啓発、そして最も大きな課題は、民間事業者に対する理解・周知ということでした。実際、それまでは障害者に対する理解不足から、近隣に障害者施設が出来ることする地域住民が反対する状況であったものを、この条例を引き合いに出して説得をしたとのことでした。こうした地道な活動のおかげで、今では市民の障害者に対する理解も大いに高まったのではないかと思います。
そして本年度、国でいわゆる「障害者差別解消法」が施行されるにあたり、八王子市でも従来の条例を改定しました。国の法律より優れている特長的な点としては障害者に対する「合理的配慮」に関する部分です。合理的配慮について市はこれまでの努力義務から義務化にしたことは差別解消法の通りで当たり前のことなのですが、法律では努力義務となっている指定管理者や市の外郭団体などについても努力義務より強い義務化としていることです。市民(障害者)にとってみれば、市の施設であればその運営が直営なのか指定管理者なのか、あるいは市の外郭団体なのか、全く関係のないことですから、この「義務化」は当たり前の発想です。
その他、今回の視察では条例以外にも八王子市が優れている点として多くの驚きと発見がありました。たとえば[障害者就労支援センター]が市立であることです。国の障害者就業・生活支援センター(いわゆるナカボツ)も八王子市にあって、その上で市立もあるのです。「両方の役割分担」をお聞きしたところ「ナカボツだけではボリューム的に対応しきれない」とのことでした。また、障害者施設からの優先調達についても、年間約2億2千万円もあるとのことでした。もちろんその多くは廃プラ作業の役務が中心ですが、「八王子障害者施設のしごとカタログ」というカラー写真入りA4で22ページにも及ぶ冊子を作成し、その発注をコーディネートするNPOが存在するなど優先調達についても積極的に取り組んでおられました。そういった点では、条例だけではなく、障害者福祉全般について非常に勉強となる視察研修でした。ぜひ刈谷市の障害者福祉施策に役立てたいと思っています。