愛知県議会議員 神谷まさひろ

東陽町ホンネの日記

2018年5月14日(月)
先日行った行政視察の所感を書き上げ、事務局に提出して来ました。

①愛媛県松山市 都市ブランド推進事業について

松山市は道後温泉や松山城などの全国に誇る観光資源をはじめ、俳句・文学といった文化的風土や豊潤な自然に恵まれた自治体です。それらに加え充実した都市機能や環境施策など、松山市ならではの特性を活かした積極的なプロモーションをこれまでにも展開して来ました。そのような中、激化する地域間競争への的確な対応として、将来にわたり資金や人材、物や情報が市へ流入し、持続発展する都市となる総合的な戦略を講じるため、都市全体の価値や魅力の向上を図り、都市そのものに対する信頼や好感を市内外から獲得する「都市ブランド」を確立することとし、平成23 年度に基本方針となる「松山市都市ブランド戦略ビジョン」を作成しました。

これを基に、平成24年度には市民のみなさんとの協働により、推進計画である「都市ブランド戦略プラン」を策定するために、みんなで松山の良さを見つめ直し、磨き、そして全国へ発信していく活動である[だんだん松山プロジェクト]を推進し、市民のみなさんによるワークショップをはじめ、関係団体や企業、また首都圏在住の本市ゆかりの方々などによる話し合いを重ねてこられた結果、松山の魅力は「人のあたたかさと、いろんなものが程よくそろったちょうどいい暮らしである」と、多くの方が語っていただいたことを踏まえ、松山の基本価値である「人と暮らしやすさ」をベースに、松山独自のライフスタイルをいかしていくことをブランドコンセプトとした推進計画をまとめられました。
 
具体的な事業としては、思いを市民のみなさんに再認識していただくとともに、市外の人には松山らしさを新鮮なイメージで感じ取ってもらえるブランドメッセージとして『いい、加減。まつやま』を作成し、そのロゴマークを市民の投票により決定しました。その『いい、加減。まつやま』を舞台に繰り広げられる冒険活劇アニメーションを制作しました。オリジナルのアニメを作成している自治体は幾つかありますので、普通のアニメでは広がらないとの考えから、「広がりを創るためのメジャー感+市民参加のプロジェクト展開」といった考えで、メジャー感のあるアーティスト・キャスト・スタッフを起用し、市民140人の歌声でサウンドロゴを制作、市民3名が本人役でキャラクターとなって登場する内容となりました。

また、具体的な事業として特に印象深かったのは、[メディアプロモーションの推進]です。これは、松山市のメディア露出、特にテレビ番組での情報露出を増やすために、積極的にメディアへのアプローチを進めておられました。松山市ならではの魅力や季節ごとの魅力を、きめ細かにメディアに伝えることで、旅番組や情報番組等での松山市の露出増加を目指す取り組みです。最も、この事業については、メディアで取り上げてもらえるだけの、歴史や自然といった観光資源が豊富にあることが優位な点であったと思います。試算によりますと、約1000万円の事業費拠出に対して、広告費換算では26億~27億円の効果があったとのことでした。

私どもの会派で開催した先のタウンミーティングにおいて「都市間競争時代における魅力創造戦略を」といった声が寄せられました。「魅力創造戦略」とは正に今回視察した「都市ブランド」を確立することであり、「松山市都市ブランド戦略プラン」を参考に、刈谷市においても市民のみなさんの刈谷市への愛着と誇りの下、刈谷市ならではの魅力を官民が一体となって磨き、広く発信していくことで、全国の人々から“ 選ばれる都市” を目指して行く必要があると改めて感じました。


②香川県高松市 史跡高松城跡保存整備基本計画について

高松城は、天正15年(1587年)に、讃岐の国の大名となった生駒親正が、天正16年(1588年)に築城を開始しました。生駒家の統治は4代54年間続いたのですが、お家騒動により寛永17年(1640年)4代目城主高俊は、出羽(秋田県)由利郡矢島1万石に移されました。この後、讃岐の国は一時空藩となり、伊予三藩が、讃岐の国を預かったとされています。寛永19年(1642年)になって、徳川家康の孫(水戸光圀の兄)の松平頼重が高松城に入り、親藩の高松藩が誕生しまし、その後11代228年にわたって城を守って来ました。明治維新後は、明治17年(1884年)、天守は老朽化を理由に解体され、明治23年(1890年)、高松城は高松松平家に払い下げられましたが、昭和29年(1954年)に、高松松平家より高松市に譲渡され、翌年(1955年)から玉藻公園として、一般に公開され、市民の憩いの場となっています。

そして、平成18年度から平成24年1月まで、天守の土台となる天守台の石垣修復を進めました。石垣は高さ13m(23段)まで積みあがり、当時の迫力ある姿が再現されていました。解体に際しては、石垣を元の位置に復元できるよう、一石ごとにカルテ(約9000枚)を作り取り組み、修復のため新たに使用した石は10%程度に抑え、総工費は約7億円とのことでした。

また現在、天守の復元をする計画があり、「高松城の復元を進める市民の会」といったNPOも立ち上がり再建機運を高めるために活動をしておられますが、現存する天守に関する写真・史料が少なく、具体的な再建計画が立てられないのが実状のようした。これについては、文化庁に対して「少ない資料でも復元が可能となるように基準を緩和する」要望をしたり、市民向けに、高松城の天守閣内部が分かる古写真や設計図面等を提出し、その資料により天守閣の復元が実現した場合には3000万円の懸賞金を払うといったユニークな取り組みもしておられました。

高松城保存整備基本計画は内容が多岐に亘ることや、現在民有地である史跡指定地周辺も含めて実施する必要があることから、段階的な実施を図る必要があり、概ね1つの段階が20年に亘り全部で3段階、つまりトータルでは60年以上も掛かる壮大な整備計画です。

その整備予算は今までのところ平均すると約1億円(その内2分の1は国からの補助)、玉藻公園全体での1年間のランニング予算は約1億円、そして天守閣復元には約50億円が掛かるということでした。現在の高松城址には天守閣がなく、石垣と櫓・門だけがある状態ですから、ある意味で完成後の亀城公園再整備と同じような状態です。そうしたものに、継続的にそれだけの歳出が市民感情として許されるのかどうか、一番関心のある部分でありました。その点では、確かに城址整備より教育・福祉に予算を使うべきとの意見もあるようですが、市民の方々は概ね前向き、賛成の立場で応援しておられるように当局の説明からは感じることが出来ました。

それは一つには、訪れる観光客の増加といった点にも起因しているのかもしれません。この計画が改定された平成23年当時の利用者は年間14万人前後であったものが、毎年1万人ほど増加して、現在では年間23万人に達しているとのことでした。増加した理由としては、ここ数年の「歴女ブーム」、インバウンドの増加、指定管理者制度にしたことにより各種集客イベントを積極的に行うようになったといったことが挙げられていました。

今回の視察を参考に、亀城公園再整備を改めて考えてみますと、「高松城址公園(玉藻公園)はスケールも大きく、観光地として非常に魅力的である」しかし、「刈谷城址公園(亀城公園)は中途半端」といった印象が否めません。偶然にも先のタウンミーティングにおいて「刈谷城再整備→石垣と櫓だけでは魅力に欠ける→更なる魅力を加味して欲しい」といった声がありました。直ぐに具体的にどのようにしていくことが「更なる魅力作り」に繋がるのかどうかは判りませんが、その視点で個人的にも更に研究・検討をして行きたいと感じました。

                                                               
③香川県坂出市 認知症初期集中支援制度について

知り合い(身内)に「もしかしたら認知症ではないか?」と疑うような症状が出たら、何処に相談に行くだろうか? たぶん病院か市役所だと思いますが、その相談を受けた病院や市役所の担当者は、その相談をどのように解決したら良いのか迷うのではないか・・・と以前から思っていました。それは、認知症の方への対応は様々な分野との連携が必要だと思うからです。そうした思いの中、目に入ったのが今回視察で訪れた坂出市による認知症初期集中支援制度の取り組みでした。認知症の疑いのある方に対してチームとして初期に対応するといった取り組みです。この「チームで」という部分が非常に肝要だと思ったのです。坂出市ではこの取り組みを平成26年10月から行っておられました。

具体的には、本人のほか家族・近隣住民・民生委員・介護支援専門員・認知症サポーター・警察などから市(地域包括支援センター)に寄せられた相談を、保健師・社会福祉士・作業療法士・サポート医・看護師・介護福祉士で構成される認知症初期集中支援チームで受け、チーム員会議において対応を検討して行きます。この会議は毎週木曜日に開催されますが、話し合い事例がない場合には会議の中止といったこともあるそうです。相談を受けた後、チーム員が対象者のお宅を訪問し、会議に報告し、状況によってはその後サポート医も対象者宅を訪問して、次のステップである医療や介護に繋げて行くのです。この取り組みがスタートしてから平成29年度末までの相談件数は94件、そのうち医療や介護に繋げチームとしての対応を終了した件数は84件でした。

坂出市では早期にこの制度をスタートさせましたが、本年度からは厚生労働省の指示で全国の自治体で制度が義務化されるとのことで、刈谷市でも本年度からスタートさせるための準備が行われているようです。認知症は早期診断・早期対応をすることで,重度化を防止することができます。住み慣れた地域で自分らしく生活していくために,認知症が疑われるかたや認知症のかたに対し,専門職がチームとなって早期に集中的に支援を行うこの取り組み、坂出市を参考にしながら刈谷市でもぜひ良い制度としてのスターとをしたいと思っています。

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